キリル・ロディン・チェロリサイタル
 お陰様で大成功でした
        聴衆370人、赤字の心配克服
 名古屋市芸衝創造センターに370人の聴衆を迎え、「キリル・ロディン・チェロリサイタル」は成功裏に終わりました。中心になって苦労された実行委員のみなさん、券売に協力して下さった会員のみなさん、本当に有り難うございました。(実行委員長 中森秀樹)

 実行委員会でたてた目標500枚のチケットは売れなかったものの、ペイラインの二五〇枚はクリアーしました。11月19日の入場者は370人でした。会場に釆ていただいた方には満足していただき、赤字を出すこともなく、いくらかの利益を上げることができました。

 ちなみに、これまでのクラシック・リサイタルのチケット販売実績は、多い傾から「エレーナ・オプラスツォワ」(95・7)585枚、「夢のデュオコンサート」 (96・1)354枚、「ポリス・スタツェンコ」(94・10)329枚、「スベトラーナ・ナヴァサルジャン」 (96・10)215枚、「ザハール・プロン」(97・10)193枚です。

 私は舞台監督として舞台の袖にいて、客席で落ち着いて聴くことができなかったので、演奏の感想は他の方に譲るとして、実行委員長としてリサイタルに関わりましたので、二、三意見を述べます。

〔なぜ私が実行委員長を買って出たのか〕
 今年3月、大阪で開かれた日本ユーラシア協会の全国総会までは、愛知県連の常任理事会の多数意見はリサイタル開催に反対でした。理由は、チェロでは開催しても赤字になるというものでした。
 私は第二分科会(文化活動)に出て、東京から来た大学の先生の話を聞いて驚きました。今の学生はドストエフスキー何なのか(誰なのかではない)知らないし、ロシア民謡の一つも知らないというのです。
 また、別の人からは、ロシア民謡と言えば「灯」であり、「カチューシヤ」であり、「ウラルのグミの木」である。これらの歌を全国に普及させた先人の功績は大きいものですが、戦後六十年になろうとする時に、ロシアの若い人たちが知らないような歌ばかり、何時まで経っても歌っている。いいロシア民謡が沢山あるのに勉強不足だという意見もありました。
 そこで私が考えたのは、ユーラシア諸国の主要国であるロシアという国の文化(文学、演劇、音楽、絵画など)を、ユーラシア協会が、会員にも会員外にも紹介しないのであれば、ユラシア協会の存在価値もなければ、存在し続けることもできないと思ったわけです。

〔それぞれのできる形で協会の催し、活動に参加しよう〕
 協会の外の人からは、500枚のチケットを売るのは簡単だろうと言われました。会員500人いれば、一人が一枚買えば500枚になるというわけです。そうは問屋が卸しません。趣味嗜好、入会の動機も様々な人が自発的に加入している組織では強制的に買わせるわけにはいきません。

 でも、コンサートはクラシックであれ民族青葉であれ、せいぜい年一回のことです。協会員であれば、最低でも自分一人は参加する。参加できなければ外部の人に売る。役員や常任理事、理事は自分も参加し、外部の人も連れてくる。さらに、積極的な人は実行委員となり券も売り、コンサートでも何らかの仕事を分担する。そうすれば成功間違いなしですが、夢のまた夢でしょうか。

 ところでみなさん、協会本部は来年10月、ピョートル・スタスニチェンコ(テノール歌手、1950年ウクライナ出身)の招聘を考えています。さあ、みなさんどうしますか。
 

聴衆も参加の音楽実感
          リサイタルを聴いて 今枝正昭(理事)
 キリル・ロディンの来日が十度目と聞いて意外に思いました。日露の交流行事に文化使節として来日するほか、神戸で開かれた千人のチェロコンサートにも参加されていると聞いて、日本のことをよく理解されていることも納得できました。
 ショパン、プロコフィエフのソナタ楽章を交えて演奏されたプログラムは緩急に富む小品で構成され、しばしの楽興の時を過ごすことができました。音楽の演奏は、大きな音で圧倒するだけでなく、時には、ささやくような小さな音からも沢山のメッセージを届けることができます。

 会場の聴衆は演奏に引き込まれ、何か、一緒に音楽を作っている気分になりました。これもロディンの力量の高さを表しているのでしょう。音楽は、会場の聴衆も参加して作るという、よく語られる真実を、この日の演奏会で確かめたように思います。

 クラシックの、どちらかと言えば地味な音楽会に、協会の呼びかけに応じて会員をはじめ沢山の人が参加しました。大きすぎるかなという会場でしたが、ほどよく入り、演奏者も気持ちが乗って演奏できたと思います。

 アンコールも四曲。最後に「聴いてチョー」と緊張をほぐす名古屋弁も飛び出して「浜辺の歌」と「赤とんぼ」の心に弛みる演奏で締めくくりました。

陶酔と興奮の一夜過ごす
      リサイタルを聴いて 寺島美恵子(会員)
 キリル・ロディンのチェロリサイタルに私も聴衆の一人として、期待を胸に会場へ足を運びました。プログラムはポッケリーニの「ロンド」に始まり、ショパンを経て、ロシアの偉大な作曲家グラズノフ、チャイコフスキー、プロコフィエフが演奏され、ピアソラの「グランド・タンゴ」でしめくくられました。

 曲目は幅広く、レパートリーも豊富で飽きさせません。最後まで陶酔と興奮に包まれた一夜でした。

 また、ロディンはサービス精神も旺盛で、アンコールでは日本の曲を幾つか披露してくれました。ピアノのミハイル・アレクサンドロフとの息もぴったりでした。

 リサイタル終了後の交歓会に私も参加しましたが、日本酒を嗜み、相撲談義に花を咲かせるロディンは、なかなかの日本通で、片言の日本語を交えて場を沸かせていました。

 チェロの演奏だけでなく、温かみのある人柄にも魅了されました。舞台を降りても、とても魅力的な人物でした。生活もまた芸術であり、そのディテール全てが演奏に生かされていくのでしょう。まだ若いので、今後の活躍が楽しみです。